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
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

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本当に怖い心不全 早期発見と自己管理が大切
心不全とは
「心不全」とは心臓のポンプ機能がうまく働かず、全身の血液循環が滞ってしまう状態のことです。心不全を発症した場合、急性期は病気の原因を取り除き、心臓の負担を軽くする治療を行います。しかし、一度弱った心臓を根治させることは難しく、慢性心不全として長期的につきあっていく人がほとんどです。治療を続けていても徐々に進行していく恐れがあります。!
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主な原因
心不全は狭心症、心臓弁膜症、不整脈などのあらゆる心臓病が主な原因です。それらの心臓病が進行した先に、心不全という状態があります。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も心不全を引き起こす心臓病の原因になりえるため、食生活や運動、喫煙、飲酒などにも注意が必要です。まずは原因となる病気を早期に見つけて治療をきちんと受け、進行のスピードを少しでも緩められるように毎日の血圧や体重など自分の体をよく知り、管理することが大切です。
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心不全も主な原因
主な原因
1
狭心症・心筋梗塞
心臓に酸素や栄養分を運ぶ冠動脈。この冠動脈の内径が狭くなった状態が「狭心症」、詰まって血液が流れなくなり、心筋(心臓を動かす筋肉)が壊死してしまう状態が「心筋梗塞」です。症状として、主に胸の痛みや、締めつけられるような圧迫感を覚えます。
長野中央病院 での 治療は…
薬物治療のほか、心臓カテーテル治療や冠動脈バイパス手術を行います。心臓カテーテル治療は、患者さんの体に負担をかけにくい方法として積極的に導入されており、死亡率の低下に大きく寄与しています。当院でも数多くの実績があります。

主な原因
2
心臓弁膜症
心臓の弁が正常に働かなくなり、心臓のポンプ機能に支障をきたしてしまう病気です。息切れや胸の痛みなどの初期症状を「年だから」と思いがちなため注意が必要です。
長野中央病院 での 治療は…
大動脈弁狭窄症に対する治療法「TAVI」をはじめ、患者さんにとって身体への負担が少ない低侵襲な治療を提供しています。

主な原因
3
不整脈
不整脈とは、脈がゆっくり打つ、速く打つ、または不規則に打つ状態をいいます。心配のいらないタイプから治療が必要なものまで様々ですが、命にかかわる不整脈もあるので早めの検査がおすすめです。息切れやめまい、動悸などの症状があったら早めに検査をしましょう。
長野中央病院 での 治療は…
不整脈のタイプによっても異なりますが、内服による保存的治療ではなく、心臓の異常な電気信号を遮断するカテーテルアブレーションによる根治手術が主流です。患者さんごとに最適なアブレーション治療を見極め、増え続ける不整脈治療に対応しています。
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心不全の治療についてインタビュー
急性期から慢性期まで
ハートチームと地域全体で患者さんをサポート
加齢や長年の心臓への負荷が原因 高齢者の罹患率が高い心不全
心臓は心筋という筋肉でできています。年を重ねると、手足の筋力が衰えるのと同じように心筋も衰え、全身に血液が行き渡りにくくなります。また、長年にわたって生活習慣病などで心臓に負担をかけていると、心臓の働きが悪くなります。心不全の罹患率は高齢になればなるほど高くなります。一度心不全になってしまうと、根治させることは難しい病気ですが、心不全の原因となる心臓病の治療や生活習慣の改善・自己管理に日々取り組んでいけば、悪化を防ぐことが可能です。
急性期から慢性期までハートチームがサポート
当院の心臓病センターでは、循環器内科医と心臓血管外科医を含む多職種で構成されたハートチームが協力して心臓病治療を行っています。ハートチームは長年にわたる経験と新たな技術、知識を携え、患者さんの病状や意向などあらゆる面を鑑みて、急性期は手術やカテーテル治療など最適な治療法を提案し、慢性期には体重・血圧・運動・栄養指導といった自己管理のためのサポートを各専門職が協力して行っています。自己管理のサポートとして、患者さんご自身や医師・看護師が患者さんの体調の変化を早く見つけるために「心不全手帳」を導入しました。その手帳を有効に使いながら地域全体で患者さんをサポートできるように、当院と連携医療機関とが患者さんの情報を共有する「地域連携パス」の取り組みも始めました。今後は往診の先生方や訪問看護・介護の方など、患者さんを取り巻くより多くの方々と連携をとり、ご自宅に帰った後も安心して最適な生活が送れるよう、継続的な支援を行っていきたいです。
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自己管理のためのツール「心不全手帳」
大切なのは早期発見と自己管理
心不全の原因疾患を早期に治療し、日々の生活習慣を見直すことで心不全の悪化を防ぐことができます。また、心不全発症予防の基本は、リスク要因を増やさず病気を進行させないための自己管理です。当院では心不全と診断された患者さんに「心不全手帳」をお渡しして、ハートチームによる療養指導を行っています。今まで心不全と診断されたことがない方でも日常生活で胸痛や息切れ、動悸、足のむくみ、疲れやすさなど、少しでも違和感を覚えるようなことがあれば「年のせい」で片付けてしまわずに、まずはかかりつけ医にご相談ください。心不全の対策には、早期発見と自己管理が大切で、そのためにも年に一度は健康診断を受けることをおすすめします。ぜひ大切な自分の体を見つめる時間を作っていただきたいです。
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板本医師が日々切磋琢磨し、刺激を感じるハートチームのスタッフ。
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内科統括部長・救急部部長
循環器内科
板本 智恵子 医師
my favorite
最近幸せを感じたのが文庫本「赤毛のアン」。どんな苦難にもめげずに、普段の生活を楽しむ姿は見習いたいことばかりです。
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日々勉強
私自身の若い頃と比べ、医薬の進歩は本当にすさまじい。後れをとらないよう日々学んでいます。
自分の健康を第一に
よく食べて、よく寝る。心身が安定していないと良い仕事ができないと思います。
自分が幸せであること
私自身が幸せでないと、患者さんを幸せにできないと思います。
徐々に進行する心不全の治療においては、痛くて苦しいこともありますが、前向きに治療に取り組む方には頭が下がり、患者さんから勇気をもらうことがたくさんあります。当たり前のことですが、医師は患者さんがいるからこそ成立する仕事です。自身の専門領域ですら未だに広く深く、日々学ぶことがたくさんあると感じています。学んだことを少しずつでも周りに還元していきたいと思っています。