整形外科
整形外科の特徴feature
整形外科では、超高齢者の外傷や運動疾患の増加、さらに個々の患者さんの高いQuality of Life(QOL=生活の質)の獲得に向け、医師の専門性も活かした医療を展開しています。また、何より患者さんの医療要求に応えるべくインフォームド・コンセントを基本とし、納得の医療がなされるよう、看護部・リハビリテーション部・ケースワーカーの専門性が発揮できる医療を実施しております。
主な疾患
骨折
骨に外力が加わり折れた状態です。完全に折れたものだけでなく、ヒビが入った状態のものや一部分が欠けた状態、陥没した状態、粉々に砕けた状態すべて骨折に含まれます。治療方法はレントゲン透視下での徒手整復術や皮膚を切開して骨の位置を戻す観血的整復手術があります。骨折部のずれが大きい場合や、関節内にも及んでいる場合など日常生活に支障が出ることが予想される場合は、観血的整復手術が必要となります。
大腿骨近位部骨折
特に高齢者に多い
足の付け根の骨折です。
骨折後は早めの対処が必要な骨折で、早期手術を行うことで術後の生命予後、ADL改善が図れます。
変形性関節症
関節内でクッションの役割をしている軟骨が摩擦によって変性し動きが悪くなったり、炎症や骨同士が直接ぶつかることが原因で痛みが出る病気です。
原因は加齢や外傷、リウマチ等様々な原因があります。
治療方法は関節内に薬剤を注入して炎症を抑える薬物療法と関節を人工関節に置き換える人工関節置換術があります。
骨粗しょう症
骨そのものがもろくなり骨折しやすくなった状態が骨粗しょう症です。高齢者の骨折の原因のひとつに「骨粗しょう症」があるとされていました。
しかし、10年ほど前から「弱い力で骨折した人=骨粗しょう症」と考えられるようになり、骨折後は「骨粗しょう症」の治療も並行して行うようになりました。日本での骨粗しょう症の患者数は約1,280万人と推計されており、その多くは女性です。
特に閉経に伴う女性ホルモンの減少や加齢によるものが原因とされています。そのほかに食生活の乱れや運動不足だけでなく、他の病気や投薬の影響、もともと骨が弱いという場合もあります。
骨の形成は20歳ごろまでなので、それを越えてから骨を強化することは困難です。
若いうちから骨が弱くならないようにバランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。10代のうちの無理なダイエットは骨がもろくなりやすいため注意が必要です。
関節リウマチ
免疫の異常により関節に炎症が発生する病気です。手足の関節が腫れたり痛みを生じたりし、重症になると関節が動かせなくなることもあります。治療は薬物療法を中心にリハビリテーションや手術を行います。
脊椎疾患
腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、腰椎変性すべり症など。
下肢のしびれや痛みに対し薬物療法やブロック治療を行います。
手根管症候群
手のひらから手首にある正中神経が何らかの原因で圧迫されることで手指のしびれや痛みが生じる病気です。
処方や注射による治療を行うこともありますが、症状に応じて手根管開放術を行います。
ばね指・ドゥケルバン病
手指の曲げ伸ばしをする際に力を伝える腱の通り道(腱鞘)が炎症により肥厚することで腱が通過しづらくなったり、腱を引っ張った状態のまま固定されてしまうこともあります。
日常生活に支障をきたす場合には腱鞘切開術を行い腱の通りを元に戻します。
腱板断裂
肩関節にある先端の骨(肩峰)と上腕骨の間に挟まれた腱板と呼ばれる腱が断裂し、痛みや腕が上がらなくなる等の症状があります。
部分断裂では保存的治療が選択されることもありますが、治癒するためには腱板修復術を行う必要があります。
主な検査・設備
一般撮影
レントゲンと呼ばれるX線検査です。
被曝が少なく、迅速に撮影ができるため診療の第一段階として行われることが多い検査です。微量なX線を人体に照射し、通過したX線の強弱を画像化します。
X線は組織によって通過する度合いが異なり、骨はX線が通過しにくいので白く、肺はほとんど通過するため黒く写ります、筋肉や臓器はその中間にあたります。
MRI
MRI検査は、磁石と電波を用いて検査しています。病変と周囲の臓器の関係を細かく観察するために行います。装置の特性から、強い磁石による金属の吸引・磁場の変動による神経刺激・電波による発熱(やけど)への注意が必要です。また、非常に動きに弱い検査となっています。
CT
CT(Computed Tomography)検査はX線を利用して、身体を透過したX線の量をデータとして集めて、コンピュータで処理することによって、身体の断面画像を得る検査です。普通のレントゲン写真よりもより細かく体内の情報を得ることができます。現在多くの施設で実用化されている装置はマルチスライスCTと呼ばれ、短時間で広範囲を細かく撮影することができます。
それにより立体的な画像(3D画像)も容易にできるようになりました。
また、病変を詳しく調べるために腕の静脈からヨード造影剤という薬を注射しながら撮影をすることがあります。
超音波検査
超音波(エコー)検査とは超音波を利用して体の内側を画像化する検査です。心臓や消化器のような臓器だけでなく筋肉や靭帯・腱の損傷、血管内の血液の流れる方向やその速さを観察することもできます。人体に無害で比較的簡便に受けることができる検査ですが、ガスや骨があると描出が困難となります。
骨密度検査
骨に含まれるカルシウムなどのミネラル成分の量、骨塩量を測定する検査です。
骨塩量を面積で割った値が骨密度となります。二種類のエネルギーのX線を照射し、それぞれについて透過したX線の強弱から骨密度を測定するDXA法で検査を行っています。骨粗しょう症の検査や治療効果の判定に使われますが、健康診断でも検査を行っています。
主な治療方法
骨折観血的手術
骨折の転位が大きいもの等観血的手術適応のある患者さんに行います。
麻酔をした上で皮膚を切開し、骨のずれを戻します。戻した場所からずれないように金属製のピンやワイヤー、ボルト、プレート、ロッド等を使用して皮下で固定をします。
手術後は早急にリハビリを開始し、今までできていたことができるまでリハビリを行ってもらいます。骨折の治療では機能回復を重視した診療を心がけています。
人工関節置換
関節の傷んで変形した部分を
取り除き人工関節に入れ替える手術です。
痛みの原因をなくすため術後は痛みがなくなることが多い治療です。
ヘルニア切除術、椎弓切除術
脊椎管狭窄症に対する治療です。椎弓を切除することで脊柱管の圧迫を解除することで痛みを取り除くことができます。
手根管開放術
手のひらの皮膚を切開し、靭帯を切ることで手根管を開放し神経の圧迫を解除する手術です。日帰り手術が可能です。
腱鞘切開術
炎症が起こっている腱鞘の上の皮膚を
1~2cm切開し、腱鞘の狭くなっている部分を切開することで腱の動きを元に戻す手術です。
関節鏡
関節の周りの皮膚に小さな穴を2~3か所空け、関節鏡というカメラを病変部位まで挿入し損傷部位の修復や切除を行う手術です。関節周辺の組織へのダメージが小さく、術後の痛みや拘縮も少ないといわれています。
腱板修復術
腱板断裂した腱と
上腕骨をつなぐ手術です。
関節鏡を使用し、糸付きのビス(アンカー)を上腕骨骨頭に差し込んで、上腕骨と腱板を縫い付けます。
脊椎ブロック注射
痛みのある神経に直接局所麻酔や抗炎症剤を注入することで痛みを取り除くことができます。
医師紹介
後田 圭(うしろだ けい)
整形外科部長
1995年卒
資格
- 日本整形外科学会専門医
- 日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
- 日本整形外科学会認定リウマチ医
- 日本整形外科学会認定スポーツ医
- 日本リハビリテーション医学会認定臨床医
所属学会
- 日本整形外科学会
- 日本肩関節学会
- 日本骨折治療学会
- 日本リハビリテーション学会
- 中部日本整形外科災害外科学会
前角 正人(まえずみ まさと)
1987年卒
資格
- 日本整形外科学会整形外科専門医
- 日本整形外科学会認定スポーツ医
所属学会
- 日本整形外科学会
- 日本関節鏡膝スポーツ整形外科学会
- 中部日本整形外科災害外科学会
下田 信(しもだ しん)
リウマチ科部長
1991年卒
資格
- 日本整形外科学会整形外科専門医
- 日本リウマチ学会リウマチ専門医
- 日本整形外科学会認定リウマチ医
- 日本整形外科学会認定脊柱脊髄病医
所属学会
- 日本整形外科学会
- 日本リウマチ学会
- 日本手外科学会
- 日本肘関節学会
- 中部リウマチ学会
- 日本骨折治療学会
- 中部日本整形外科災害外科学会
水谷 順一(みずたに じゅんいち)
2001年卒
所属学会
- 日本整形外科学会
- 日本脊椎脊髄病学会
- 中部日本整形外科災害外科学会
診療実績
非外傷
2020年 | 2021年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|
非外傷 | 113 | 121 | 127 | |
手指腱鞘炎・ドケルバン病 | 29 | 50 | 41 | |
絞扼性神経障害 | 24 | 20 | 30 | |
間接形成 | 38 | 26 | 27 | |
脊椎 | 9 | 9 | 8 | |
腫瘍 | 3 | 4 | 1 | |
感染 | 4 | 8 | 11 | |
切断 | 4 | 4 | 5 |
外傷
2020年 | 2021年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|
外傷 | 220 | 232 | 222 | |
腱損傷 | 8 | 7 | 7 | |
骨折 | 肩甲肢帯 | 13 | 15 | 14 |
肘 | 4 | 2 | 4 | |
前腕 | 47 | 42 | 45 | |
手 | 10 | 16 | 20 | |
股・大腿 | 109 | 122 | 114 | |
膝 | 6 | 1 | 5 | |
下腿 | 21 | 21 | 1 | |
足部 | 2 | 6 | 11 | |
その他 | 膝関節鏡 | 3 | 1 | 1 |
抜釘 | 31 | 44 | 42 | |
異物 | 1 | 1 | – |