消化器内科

消化器内科の特徴feature

通常の上下内視鏡だけでなく、経鼻内視鏡、カプセル内視鏡、シングルバルーン小腸内視鏡、超音波内視鏡、膵胆管造影検査など、あらゆる消化器疾患に対応できるよう体制を整え、若いやる気に溢れたスタッフを中心に、レベルの高い診療を提供するために日々研鑽を積んでいます。また、肝臓の分野でも、せん断波を利用した肝硬度の測定や、造影超音波が可能なシステムを常備しており、炎症から腫瘍まで幅広い疾患に対応しています。

主な疾患

消化器悪性腫瘍

食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、直腸がん、肝臓がん、胆のうがん、膵臓がん、消化管悪性リンパ腫などの消化器のがんです。2021年の調査では日本人の死因の25%以上が悪性腫瘍であり、その約半数を消化器悪性腫瘍が占めています。(厚生労働省の人口動態統計より)がんは早期発見早期治療で予後が良くなる病気です。消化器内科では早期発見のための検査を積極的に行い、早期のがんであれば内視鏡的治療(EMR、ESD等)を行います。また、治療に際しては外科的手術の適応がある患者さんには消化器外科への紹介を行い、緩和的処置が必要な患者さんには消化管ステントやERCPなどの処置を行うことで患者さんのQOL向上(患者さん自身がどう生きたいのかを考え、その思いを実現すること)を一番の目的として一人ひとりに最適な治療を提案いたします。

消化管ポリープ・腺腫

胃や大腸の粘膜下腫瘍やポリープなど粘膜の一部がイボのように隆起したものです。ポリープには過形成ポリープとがんになる可能性がある腺腫という種類があります。腺腫のうちに切除することでその後のがん化の予防をすることができます。

消化性潰瘍

胃や十二指腸、大腸の粘膜が傷つくことで起こる病気です。胃潰瘍、十二指腸潰瘍はヘリコバクター・ピロリ菌感染や粘膜を弱くする薬剤によって胃酸や消化酵素によってただれ、場合によっては出血を伴います。

ヘリコバクター
・ピロリ菌感染症

胃の中に住むピロリ菌という慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんの原因となる細菌による感染症です。薬による除菌を行うことで潰瘍やがんの予防をすることができます。

胃食道逆流症・逆流性食道炎

胃内部から食道に胃酸が逆流することで胸焼けや胸部の痛みを感じる病気です。治療には胃酸を抑える薬を内服することで炎症を抑えます。

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類があり、原因は自己免疫や腸内細菌と言われています。両疾患とも30代以下と若年で発症することが特徴の一つで、血粘便や下痢、腹痛などの症状があります。治療は炎症を抑える薬の内服や免疫を抑える薬の投薬によって症状を抑えます。

虚血性腸炎

さまざまな原因で腸に栄養を送る血管の血流障害が起こることで粘膜障害が発生する病気です。突然の腹痛や下痢、血便の症状があります。炎症が強い場合には入院となり、治療は絶食や点滴を行います。症状が強く腸管が狭くなっている場合には手術によって腸の動きを正常にする場合もあります。

胆石症・胆のう炎

胆のうが炎症を起こすことで持続的な上腹部や右季肋部痛、発熱などの症状があります。原因の多くはは胆石が胆管に詰ることで胆汁の流れが阻害されて細菌感染が起こる場合です。治療は抗生剤の投与により炎症を抑え、外科的手術を行い胆のう(胆石)の摘出を行います。

腸閉塞・イレウス

腸管の内容物が詰まるなど通過できなくなる病気です。症状は腹痛や吐き気、おなかの張りなどがあり、激痛となる場合もあります。術後に起こる癒着や神経障害による麻痺、腸管の痙攣などが原因となります。治療はイレウス管というチューブを鼻から入れるほう方法や手術による通過障害の解除があります。

主な検査・設備

上部消化管内視鏡検査
(胃カメラ)

口から内視鏡と呼ばれる管を入れ、食道から胃、十二指腸まで観察を行う検査です。がんの診断の他にも病変部の切除や検体の採取、止血、異物除去等も行うことが可能です。

下部消化管内視鏡検査
(大腸内視鏡)

肛門から内視鏡と呼ばれる管を入れて大腸全体を観察する検査です。がんやポリープ、潰瘍性大腸炎等の診断やポリペクトミー等の手術にも用いられます。

小腸内視鏡検査
(カプセル内視鏡)

通常の内視鏡(胃カメラ)では困難な小腸の観察をする検査です。約2cmのカプセル型の内視鏡を口から飲み込み、腸管を通過する際に一定時間ごとに自動で撮影をしていきます。通常の胃カメラや大腸カメラと違い組織採取や治療をすることはできません。

超音波内視鏡検査
(EUS)

胃カメラの先端に超音波診断装置が備わった内視鏡を用い体の中から超音波検査を行う検査です。体の表面からでは検査が困難な膵臓や胆のう等を詳しく調べることができます。がんが疑われる場合には病変部の生検を行い細胞の検査を行うこともあります。

CT

CT(Computed Tomography)検査はX線を利用して、身体を透過したX線の量をデータとして集めて、コンピュータで処理することによって、身体の断面画像を得る検査です。普通のレントゲン写真よりもより細かく体内の情報を得ることができます。現在多くの施設で実用化されている装置はマルチスライスCTと呼ばれ、短時間で広範囲を細かく撮影することができます。それにより立体的な画像(3D画像)も容易にできるようになりました。
また、病変を詳しく調べるために腕の静脈からヨード造影剤という薬を注射しながら撮影をすることがあります。

MRI

MRI検査は、磁石と電波を用いて検査しています。病変と周囲の臓器の関係を細かく観察するために行います。装置の特性から、強い磁石による金属の吸引・磁場の変動による神経刺激・電波による発熱(やけど)への注意が必要です。また、非常に動きに弱い検査となっています。

エコー

超音波(エコー)検査とは超音波を利用して体の内側を画像化する検査です。乳腺、甲状腺、心臓、肝臓など、特定の臓器を細かく観察するために行います。心臓や消化器のような臓器だけでなく筋肉や靭帯・腱の損傷、血管内の血液の流れる方向やその速さを観察することもできます。人体に無害で比較的簡便に受けることができる検査ですが、ガスや骨があると描出が困難となります。

肝生検

皮膚の上から針を肝臓に刺し、肝臓の組織の一部を採取する検査です。針を刺す際には超音波で位置を確認しながら行います。画像診断ではわからない病気の原因や病態の把握ができます。

主な治療方法

内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
・ポリペクトミー

胃がんであれ、大腸ポリープ(大腸がん)であれ、あるいは食道がんであっても、腫瘍が粘膜の浅いところまでの進行に留まっている場合は、内視鏡で粘膜の表面を取り除くだけで完治します。この方法が、ポリペクトミーあるいはESDと呼ばれるものです。この二つの違いは、切除用の輪になったワイヤーを縛り上げて、瞬間的に切除してしまうものと、少しずつ丁寧に剥離していく方法の違いになりますが、病態に適したやり方を選ぶことになります。
幸い、当院の健診などで発見される半分以上の消化管がんは、これらの治療にふさわしい早期のものです。これら内視鏡的治療は、いわゆる開腹手術が必要にならないので、体への負担がとても軽く済みます。

経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)

肝臓がんへの治療法の一つで、皮膚の表面からがん病変に針を刺してラジオ波により発生する熱でがん細胞を焼灼する治療です。外科的切除と比較すると体への負担が少なく、できるだけ肝臓の機能を温存することも可能です。RFAは繰り返し何度でも治療することができるため再発しやすい肝臓がんに効果的な治療です。

経皮的胆道
胆嚢ドレナージ
(PTCD、PTGBD)

胆管または胆のうに管を入れ胆汁を体外に排出する治療です。胆のう炎や胆管がんにより閉塞性黄疸が認められる場合に行います。管の挿入は体表からエコーガイド下にて胆汁の詰まっているところを穿刺して管を挿入します。

消化管ステント

消化管ステントは、胃がんや大腸がんにより狭くなった消化管を開通させる治療の一つです。がんで胃や腸が狭くなると吐き気の原因になったり、食事が摂れなくなったりします。
食事が摂れないと手術や抗がん剤といった癌治療ができなくなってしまいます。手術を行わない場合でも、食事が摂れない状態が続くと身体が弱ってしまいます。消化管ステントはこうした状態を改善させ、食べられるようにする治療として有用です。
消化管ステントでの治療は、胃カメラや大腸カメラといった内視鏡を使い、狭い所に形状記憶合金でできた管(ステント)を留置することで行います。内視鏡で行うため体への負担や合併症を少なく治療できます。大腸がんなどで腸閉塞となってしまった場合には、緊急でステント治療を行うこともありますが、完全に詰まってしまう前に閉塞予防として行うこともあります。

内視鏡的静脈瘤硬化療法
(EIS:Endoscopic injection sclerotherapy)
内視鏡的静脈瘤結紮術
(EVL:Endoscopic variceal ligation)

肝硬変などを背景に出血のある緊急性の高い症例や未破裂の静脈瘤に対して予防的に行う治療です。EISは食道静脈瘤に対して内視鏡を使用して硬化剤を注入する治療法です。
レントゲン透視下で硬化剤の注入部位を確認しながら行います。直接硬化剤を注入するため再発率の低い治療です。
EVLは内視鏡を使用して処理用のゴムで静脈瘤を縛り上げる治療です。簡便で安全性の高い治療ですが、再発率も高いといわれています。当院では患者さんの状態に応じて治療方法の選択をしています。

胃ろう(PEG)

体表に穴を空けて管を通し、胃に直接食べ物を流し込めるようにする治療です。誤嚥性肺炎を繰り返す嚥下障害等、加齢や病気によって口から食事を摂取することができない患者さんの栄養確保を目的に行います。増設は内視鏡を使用して胃の内側から管を留置します。胃ろうのボタンやチューブは損傷がなくても半年に一度は交換が必要となります。

肝動脈化学塞栓術(TACE)

肝臓がんへの治療法の一つで、肝臓へ栄養を送る血管に薬剤を注入することで血管を塞ぎ、肝臓内のがん細胞を壊死させる治療法です。レントゲン透視下にカテーテルと呼ばれる管を肝臓の血管内に挿入しカテーテルの先端から薬剤を注入します。

薬物療法

薬物療法とは飲み薬や注射などで投与された抗がん剤が、血液を介して効果を発揮する全身治療のことを言います。
抗がん剤治療の目的は、がんを治癒させること、がんの増殖を抑え、延命効果を得ること、がんが原因と考えられる症状を和らげること、生活の質の改善などさまざまです。
がんの薬物療法は日々進歩しており、細胞が分裂して増える過程に作用する昔ながらの殺細胞性抗がん剤の他、ここ数年は、がん細胞の中の増殖や転移に関係している遺伝子を狙い撃ちする分子標的薬といわれる新しいタイプの薬も発売されています。
また2014年には、まったく新しいタイプの免疫療法の一種である免疫チェックポイント阻害剤が発売されました。これらの薬物を効果的に組み合わせて治療することで、治療効果が飛躍的に高くなったがんの種類もあります。
薬物療法の進歩によって、入院期間の短縮や副作用の軽減など、患者さんの身体的、精神的、そして経済的な負担が抑えられるような治療法が増えています。

内視鏡的逆行性胆道膵管造影
(ERCP)

ERCPは、内視鏡を使用して胆管や膵管などの詳細な観察を行い、検査や治療を行う手段です。内視鏡を食道、胃、十二指腸に進め、そこから膵臓や胆道へアクセスし、X線を使用して管の中を直接観察します。膵臓や胆道にがんが疑われる場合は、内視鏡で患部の一部を採取して、細胞の検査を行うこともできます。
また、がんにより胆道が圧迫されて黄疸や肝障害をきたしている場合は、ステントを挿入することで圧迫を緩和し、患者さんのデータや全身状態を改善させます。検査や処置は比較的短時間で完了し、状態が良ければ翌日から食事が可能です。

医師紹介

小島 英吾(こじま えいご)

小島 英吾(こじま えいご)

副院長 診療部長 内視鏡部長

1996年卒

資格

  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医、暫定教育医
  • 日本内科学会認定内科医、総合内科専門医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医、本部評議会、支部幹事・評議員
  • 日本消化器病学会消化器病専門医、指導医、本部評議会、支部評議員
  • 日本ヘリコバクター学会H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医
  • 日本温泉気候物理医学会温泉療法医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本胆道学会
  • 日本ヘリコバクター学会
松村 真生子(まつむら まきこ)

松村 真生子(まつむら まきこ)

消化器内科部長 病理科部長

2002年卒

資格

  • 日本内科学会認定内科医、総合内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医、本部評議員、支部評議員
  • 日本肝臓学会認定肝臓専門医、指導医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本緩和ケア医療学会認定医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本肝臓学会
  • 日本病理学会
  • 日本超音波医学会
  • 日本緩和医療学会
  • 日本肝癌研究会
  • 日本消化器内視鏡学会
桑原 蓮(くわばら れん)

桑原 蓮(くわばら れん)

2018年卒

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本プライマリ・ケア連合学会
  • 日本医学教育学
  • 日本超音波医学会
  • 日本肝臓学会
  • 日本緩和医療学会
遠藤 湧斗(えんどう ゆうと)

遠藤 湧斗(えんどう ゆうと)

2018年卒

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本肝臓学会

中森 亮介(なかもり りょうすけ)

2015年卒

所属学会

  • 日本内科学会
  • 消化器病学会
  • 消化器内視鏡学会
寺島 慶太(てらしま けいた)

寺島 慶太(てらしま けいた)

2021年卒

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会

診療実績

2021年 2022年 2023年
上部内視鏡 6,454 6,029 6,454
下部内視鏡 1,828 1,954 2,054
S状内視鏡 38 25 35
EUS 54 47 55
カプセル内視鏡 10 8 7
上部ESD 38 22 25
ポリペク 367 313 356
ERCP 167 127 163
胃・
十二指腸ステント
8 8 5
下部ステント 7 7 7
PTGBD/PTCD 30 35 32
RFA 15 7 8
肝生検 17 15 24
EVL 6 13 20
EIS 3 2 2
PEG 28 16 21
TACE 5 4 3