ステントグラフトとは、人工血管(グラフト)に金属製でできたバネ状の骨組み(ステント)を縫い付けた医療器具です。動脈硬化や生活習慣病が主な原因となり起こる大動脈瘤や大動脈解離に対して行われる治療法の1つです。足の付け根などの血管からカテーテルという細い管を入れて、ステントグラフトを大動脈瘤や大動脈解離に留置することで大動脈瘤が大きくなることを防ぎ、大動脈解離を内側から支えて解離腔が拡大することを予防することができます。外科的手術(開胸・開腹手術)と比べ患者さんの体への負担が少ない手術方法です。
大動脈瘤や大動脈解離の形状や部位によりステントグラフトでの手術が困難なケースでは開胸・開腹による人工血管置換術を選択する場合もあります。
画像出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス
治療方法
足の付け根から小切開法また穿刺法によりステントグラフトを収納したカテーテルをX線透視を見ながら大動脈瘤や大動脈解離の治療する部位へ進めます。治療部位でステントグラフトを展開することで血管壁に密着されます。治療する部位の範囲が広い場合には2つないし3つのステントグラフトを連結して使用します。
穿刺法でのステントグラフト挿入
2021年より従来の小切開法に加えて穿刺法での挿入が可能となりました。
小切開法ではカテーテル挿入時に皮膚を切開し、血管を露出させてから穿刺を行っていたため、切開による傷が3cm程度残ってしまい手術後には縫合が必要でした。
穿刺法では血管を露出させずに皮膚の上からカテーテルを直接挿入できるため傷の大きさが1cm程度と小さく1週間もするとほぼわからなくなります。当院では穿刺法ではパークローズ「PROGLIDE(プログライド)®という特殊な止血器具を用いて止血を行います。
手術時間
胸部:約2~3時間
(患者さんの病態によって異なります)
腹部:約2~3時間
(患者さんの病態によって異なります)
※手術室への入室から病棟へ帰るまでの時間
退院後
ステントグラフト内挿術を受けた後は定期的に大動脈瘤が大きくなっていないか、大動脈瘤内への血液の流入(エンドリーク)がないか、ステントグラフトの移動・閉塞・破損などが生じていないかをCTスキャンにより年1回経過観察が必要となります。
入院期間
約14〜28日間
※入院期間はあくまでも目安であり、患者さんの状態によって異なります。
入院費用
※ステントグラフト内挿術は高額療養費制度が適応されます。費用は年収や年齢によって異なります。
高額療養費制度について